長谷川大喜による「ワークプレイスデザインにおけるワークショップの手法」勉強会レポート

「ワークプレイスデザイン」という言葉をご存知でしょうか。オフィス家具のレイアウトを考える研究のことで、近年ではオフィスのインテリアを考える際にそこで働く人々がどのような空間を求めているかを聞き出してまとめるという仕事が重要とされます。オフィスをデザインする過程で必要とされるのは、オフィスで働く人々に仕事に影響が出ない少ない時間で効果的に欲求の根本的な原因を聞き出すワークショップ。1月12日にDeまちで行われた勉強会「ワークプレイスデザインにおけるワークショップの手法」では、京都工芸繊維大学大学院でワークプレイスデザインを学ぶ長谷川大喜さんその手法を紹介、実践しました。

【講師プロフィール】

大ちゃんプロフ


長谷川大喜

京都工芸繊維大学大学院デザイン経営工学専攻修士1回生
環境デザイン経営 仲研究室 ワークプレイスデザイン
1991年京都生まれ。2014年京都工芸繊維大学デザイン経営工学課程卒業。2012〜2014年「京都Xキャンプ与謝野」に参加。京都北部の与謝野町でランドスケープデザインプロジェクトや里山の設計を行う。

オフィスとは?

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長谷川 こちらは、アイルランドのダブリンにあるGoogle社の写真です。すごく格好良くて、一瞬「この人ら遊んでるんちゃうか?!」と思ってしまうほど自由なオフィスですが、近年はこのような場所の方がクリエイティブなものが生まれると認識されており、それを意識的につくっている企業が多くあります。

オフィスの歴史

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長谷川 そもそもオフィスとは、事務処理や意思決定、企画会議や課題を行う場所とされています。歴史を見ていくと、1860年代にアメリカの南北戦争以後、世界最初のオイル会社と言われるスタンダードオイル社をはじめとする大規模法人の出現によって、オフィスビルディングの需要が高まります。1870年代に鋼鉄製構造物とエレベーターが登場したため、17世紀後半にはどんな大きさの建築物も建設可能になりました。また、オフィスに必要な道具もその頃に発明され始めます。光は窓から取り入れるしかなかったけど、1987年にエジソンが電球を発明してからは、大きいオフィスでもどこでも作業ができるようになり、1880〜1900年代には電話、テープライター、機械式計算機が発明されオフィスの業務の拡大が可能になりました。

日本のオフィスデザインの変遷

長谷川 日本では1924年に初期のオフィスビルのひとつである門司電気通信レトロ館が建てられました。つまり、日本のオフィスの歴史はまだ100年ほどしかないんですね。次に、日本のオフィスデザインの変遷をたどってみましょう。

1987〜90年代 ニューオフィス前期
様々な企業にあるべき「快適で機能的な空間」を「ニューオフィス」として作っていこうと、経産省によって社団法人「ニューオフィス一般社団法人」が設立されました。この時期から、公にオフィスの改善が進められます。(長谷川)

1990年以降 ニューオフィス後期
それまでの「快適で機能的な空間」に、「経営に資する空間」というのが加えられました。それまで快適ということしか見られていなかった空間が、空間を良くすることで経営的にも良くなるということが一般にも知られ始めてきたのです。また、それまで同一のオフィスで良いとされていたのが、多様なオフィスが必要だという考えに改められたのです。(長谷川)

2011年以降 クリエイティブ・オフィス
オフィスに求められた新しい空間として発明された言葉がこれ。企業独自の働き方を誘発するオフィスのことです。クリエイティブ・オフィスのひとつの例として、2007年にクリエイティブ・オフィス賞を受賞した株式会社TBWA\HAKUHODOを紹介しましょう。ここは広告代理店なので、このオフィス自体が宣伝媒体になると考えて設計されています。(長谷川)

オフィス設計に必要とされる「プレ・デザイン」という発想

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長谷川 TBWA\HAKUHODOのようなオフィスデザインは広告業界だからこそできるものであって、別の会社だと「もっと静かな空間で働きたい」という経営者や社員のニーズがあるかもしれません。企業が異なればオフィスも異なるため、オフィスを設計する際には色んな要望を聞いてまとめなければいけません。そのときに必要となるのが、「プレ・デザイン」という発想。これは、建築設計の前提条件をデザインする仕事です。この言葉が出てきたのは2010年ころ。オフィスづくりをユーザー参加型にすることで、本当にユーザーが欲しい情報や新しい発想を設計要件に加えることが豊かな設計条件づくりになって、それがクリエイティブ・オフィスに繋がるという考えです。これは性別や役職によってオフィスの空間に求めるニーズは異なっているという考えが前提にあり、その差を様々な手法で表出させてからビジュアルイメージを提案し、ユーザーと繰り返し対話することでより具体的で現実的な空間、そして新しい発想の空間が生まれます。

プレ・デザインを実現する様々な手法

長谷川 ユーザーのニーズを聞くとき、アンケートでは枠組みが定められ、時には誘導的になってしまうので、対面で行うインタビューの方が有効であると考えられています。そこで、インタビューを使ったワークショップ手法を3つ紹介します。

(1)評価グリット法
ユーザーにいくつかの例を提示して、その対象に対する好ましさを選定してもらい、次に選定理由を「ラダリング」と呼ばれるインタビュー手法でヒアリングするというものです。ユーザーに容易に自身の思考を言語化させられることが特徴。(長谷川)

(2)箱庭手法
ユーザーに模型を作ってもらい、その最中にユーザー同士が話していた内容から設計条件を取り入れる手法です。特徴としては、ユーザーの真意を形と言葉で得ることができるという点。(長谷川)

(3)キャプション評価法
ユーザーにカメラを持ってもらい、対象となる空間を自由に歩いて気になる空間などを撮影してもらってユーザーの真意を抽出する手法です。(長谷川)

実際にワークショップ手法をやってみよう

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長谷川 ではここで、評価グリット法を使ったワークショップをやってみようと思います。本来ならばインタビュアーと記録者は別の者がやるのですが、今回は一対一で行います。まず、ここにある10枚のオフィス写真の中から「自分が働きたい」と思ったオフィスのベスト3を選んでください。

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参加者が発した言葉をポストイットに書き留めていく。

参加者 選びました。

長谷川 2番目に選んだオフィスより、1番目に選んだオフィスの方が良いと思った理由を教えてください。

参加者 天井の高さが丁度良い。

長谷川 なぜ天井の高さが丁度良い方が良いのですか?

参加者 個人的な感覚ですが、これは落ち着ける高さ。高すぎると落ち着かないけど、低すぎると圧迫感があるから。

長谷川 なぜ気持ちを落ち着けることが必要なのですか?

参加者 考えたりするときに集中できるからです。

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質問に対する参加者の答えを一つずつ書き出した結果。

長谷川 ……といった風に、「なぜ」を3、4回繰り返し聞いていくことで、ユーザーがその空間のどこか良いと具体的に感じているかが洗い出されます。

質疑応答

参加者 インタビューが中心で、アンケートは使用しないのですか?

長谷川 ケース・バイ・ケースですね。会社全体の意見が欲しい場合などはアンケートを実施しますが、こちら側からはできるだけ先ほど紹介した手法を使ったワークショップの実施を提案します。僕の研究室の先生も、実際に話すことが大切だと言っています。

長谷川 以上ですかね。オフィスデザインを研究室として持っている大学は僕が通っている京都工芸繊維大学しかなく、このような専門的な視線を持ってオフィスをみるというのは、僕たちの研究室でしかできません。大変面白いテーマなので、少しでも興味を持ってもらえたらと思います。本日はありがとうございました。

 

長谷川さんによる「ワークプレイスデザインにおけるワークショップの手法」は、好評につき第2回を開催することが決定しました。詳細が決まり次第、本サイトとDeまちのFacebookで公式にお知らせします!

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川上 ひろこ

川上 ひろこナポリタン編集長 / ライター

投稿者プロフィール

1992年大阪府摂津市生まれ。京都精華大学在籍。2012年春に同大学を休学し、栃木県益子で環境問題を扱うNPOの元で2ヶ月のあいだ環境保全活動をする。同年夏より、ご縁がありフリーライターとして東京の広告代理店の編集業務を取り扱う部署に常駐。憧れていた雑誌やネットニュースの原稿執筆をする。2014年春より復学し、現在は京都市左京区の「恵文社」から自転車で7分の距離にある家でシェアハウス中。好きな食べ物はチョコミントとパクチー。「ナポリタン」を京都愛あふれるウェブサイトにするため、今日もママチャリに乗ってネタ探し。

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