「まちづくりに疲れた人が初心に返るための再入門書でありたい」—『モテるまちづくり』著者・谷亮治さんインタビュー

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 谷亮治

博士(社会学)。専門社会調査士。1980年大阪生まれ。専門は、住民参加のまちづくり論、コミュニティ論。現在、同志社大学、立命館大学、龍谷大学、京都橘大学にて講師を務める。そもそも「まちづくり」とは何か、「コミュニティ」とは何か、どのような条件が整えばそれらは「うまくいく」のか、それらがうまくいくと、どう有効な作用をもたらすのか、そもそも「まちづくりがうまくいく」とはどんな状態なのか、というようなことを考えている。著書に『モテるまちづくり-まちづくりに疲れた人へ。』(2014年12月発刊)がある。

「まちづくりに疲れた人へ」———。

まちづくりが一種のブームとなっている現代に、衝撃的な一文が書かれた帯の本が出版されました。その本の名は、「モテるまちづくり」。自費出版でありながら、発売から1ヶ月あまりで初版200冊が売り切れ、急遽増版が決まった話題作です。その著者である谷亮治さんに、谷さん流のまちづくり論を伺いました。

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人間の集団に希望を。”

—まちづくりをするようになったきっかけを教えてください。

谷 まちづくりに関わっている人って、コミュ力の高いリア充を思い浮かべそうですが、僕はむしろ逆で、もともと一人遊びが得意な、ノートに漫画とか描いてた子でした。あんまり何も考えずに地元を離れて進学校の高校に進んだところ、高校3年と浪人した1年の4年間をぼっちで過ごすことになってしまいました。どうやら人間は人と一緒に何かをしないと記憶に残らない仕組みになっているようで、僕は高校生の時の記憶がほとんどないんです。でもそれじゃあさびしくてですね。大学に進学したのは「大学デビューしてモテたい」という理由からです。

そんな理由で進学したので、大学ではいろんなサークルに顔出しました。そんな柄でもないのに映画サークルやテニスサークルに入ったり。しかし、どうもソリが合わない。色んなところを転々している内に、乾亨先生のまちづくりゼミに入ることになりました。乾先生のゼミはまちづくりを理論的に教えるというより、まちづくりを頑張っている地域に学生を放り込んで、「まちの人のお手伝いをさせてもらいなさい、その中で学ばせてもらいなさい」というスタンスでした。僕らが参加させてもらった地域は、いずれもとてもうまくまちづくりをされている地域で、そこでは僕のような何も知らない、特別な力を持たない学生にも役割を与えてくれて楽しくなれる、かつその地域に貢献できるようにしてくれるんですね。うまくやっているまちには、そういった、役割とやりがいを持って貢献することを可能にするという知恵と技術があることに気付いたんです。当時の僕は、長らくぼっちだったこともあり、人の集団に期待をしていない、イヤな子だったのですが、そのときに「人間の集団ってすげぇ」と思ったんです。人間の集団って、うまくやればこんなにすごいんだと。先ほど、人と一緒に何かしないと記憶に残らないと言いましたが、いい集団ではいい思い出ができるという経験がとても楽しくて。

でも僕も学生でしたし、ずっといい集団の中に居られるわけじゃない。いずれ離れなければいけない時が来る。その時、どこに行ってもいい集団が作れる智慧と技術があれば、安心して旅立てますよね。そこで、いい集団をつくる智慧を学ぶために、上手くやってはる地域を転々とフィールドワークをしていったんです。それで大学院まで進学し、今の仕事に至っています。

—その「ぼっち」であったというマイノリティの視点は、谷さんのまちづくり活動に影響していますか。

谷 そうですね。僕は非リア充のぼっちの時間が長かったので、未だにコミュニティという言葉にコンプレックスがあると思います。しかし、よくコミュ力が大事というけど、一番良いのは、コミュニケーション能力の低い人でも活躍できる環境ですよ。あらかじめコミュ力の高いイケてる人しか救われないとするなら、そのまちは幸せになれないと思っています。

まちづくりアドバイザーの面接で面接官から「この仕事、地域のおじいさんやおばあさんと話す機会が多いけど大丈夫?」と質問されたことがあります。要は、「コミュ力大丈夫?」という質問ですね。僕はその時考えて「まちづくりをされている方は皆さん良い人で、コミュニケーション能力も高いから皆さんの懐に甘えていけば良いと思っています」と答えました。自分の回答ですが未だにそれは良いセンいってるんじゃないかなと思っています。

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まちづくりに疲れた人が初心に返るための再入門書。”

—『モテるまちづくり』を自主出版されたきっかけは。

谷 まちづくりで飯が食えるようになるにはどうしたら良いかを考える「まち飯」という研究会で、2014年の正月に「4年間続いている勉強会の学びのまとめを作ろう」という意見が出たんですね。そのときに僕が「じゃあ書きます」と言ってしまったのがきっかけで書くことになりました。

—まちづくりがブームになった今、新卒や休学中の学生なども地域おこし協力隊などの制度を使い、まちづくりに取り組んでいることが増えてきたと感じています。本書を読み、そういう人たちへのまちづくり入門書になるのではないかと思いましたが、いかがでしょうか。

谷 そうですね。僕がまちづくりに関わるようになったのは2000年頃なのですが、当時まちづくりは今よりずっとマイナーな趣味だったと思うんですよね。しかしその後、2000年代後半あたりから急速にメジャー化している印象を受けています。その結果、まちづくりを経験したことがないジャンルの方々が仕事柄参加しなければいけない場面が増えてきたと思います。プレイヤーが増えること自体は良いことだと僕も思っているんですが、一方で“まちづくりに疲れてしまう”人も増えやすい状況にある。その人たちの話を聞くと、最初は「地域のためにやろう」という素朴な思いで持ち出しでスタートされるんですよね。でもその後に「いつまで続ければいいんだろう?」という疑問が出てきます。地域はそこにずっとあるので、1回やれば終わりというわけにいかない。結果、みんなのためになるいいことをしているはずなのに、なぜかやっていてどんどん消耗して疲れてしまうという不思議な状況が生まれる。でもその理由を説明して、まちづくりの疲れをとってくれる本っていうのが、僕の知る限りなかったんですね。なので、この本は、いわゆる入門書としても読めますが、そのように疲れてしまった人が、一周回ってもう一度初歩に戻るための入門書として読まれても良いなと思っています。

“『モテるまちづくり』はSF小説です。”

谷 よく、「モテまちってどんな本ですか?」と聞かれたときにこたえていることですが、この本は論文でもエッセイでもなく、「SF小説です」と言っています。ここに書いている話はあくまで仮説です。もちろん、単なる思い付きではなく、これまで僕が見てきた「モテているまちや人」に共通する条件から導き出した仮説ではありますが、どこまで科学的に確かな普遍性があるかはまだわからない。なので、今の段階で「“モテるまちづくり”は、あります!」と言いきることはできません。この理論が正しいかどうか、これからぼくらは実践の中で確かめていかなければならない。でもそのためには、まずまちづくりの疲れを軽くして、一歩踏み出せないといけない。

物語はフィクションです。でも、フィクションには人を勇気づける力があるはずです。面白い本を読んで、ついその主人公のようにふるまってみたくなるってことは皆さんも経験あると思うんですけど、それですね。この本を読んだ人がつい前向きにまちづくりに取り組みたくなるような物語になればいいなと思います。

—読者からの反響は。

谷 本の中で「コミュニティは、あらかじめあるものではなくて、意思と智慧でつくる機能だ」と書いたのですが、それが心に響いたと言ってくれた人はいっぱいいますね。僕、「コミュニティ再生」という言葉が苦手なんです。「再生」って、かつてあったものを再び蘇らせることですよね。例えば、コミュニティというとき、井戸端会議なんかがユートピア的に語られていますが、あれ「ほんとか!?」と。人が水を汲みに井戸に集まると良好な関係が自然に生まれるなんて話、どうも怪しい。井戸に水を汲みに行って嫌な奴がいたらどうするんですか(笑)。水を汲みに行くだけでストレスが溜まってしまいますよね。コミュニティは「すでにあるもの」と思われがちですが、「コミュニティは機能である」とするなら、人の意思と智慧で作っていくものだ、と考えよう、というのがこの本の主張で、共感してくれた読者の方もいたようです。

“まちづくりをしている人はモテて良いはず。”

—目を引くタイトルですが、まちづくりに「モテる」という言葉をつけたのはなぜですか。

谷 この本で一番重要なのは、「モテる」という概念です。まちづくりって、みんなのためになることをしているんだから本当はモテていいはずなんですよ。でもなんか、モテっていうキーワードと遠そうじゃないですか。そりゃモテたい盛りの若い人もなかなか参加しませんよ。そう思って、あえてタイトルをつけました。手前みそですが、逆説的で新書っぽくていいなと思っています。

もちろん、流行りの『コミュニティデザイナーによるソーシャル〇〇』的なカタカナタイトルにすることもできましたが、それはちょっと洒落臭いなと。本心はそういうスタイリッシュなカタカナタイトルに対して「羨ましい」という気持ちはありますが。僕も「ソリューション」や「イノベーション」って言っておしゃれな若い人にちやほやされたい(笑)。まあ、それはそれですが。

—谷さんはぼっちだとおっしゃっていましたが、自費出版までされてモテるようになったのではないでしょうか。

谷 どうでしょうねー。確かにたくさん反響をもらえたのはうれしいです。その意味では、ちょっとモテてしまっているのかもしれません。でも、そこに執着したら絶対ダメですね。いずれ消えるものです。

—谷さん流のまちづくり、たくさんお話しいただきありがとうございました! 最後に、出町のイベントスペース「Deまち」で4月28日(火)から始まる谷さんが講師の連続講座「モテという視点でまちづくりを解釈する、モテまちスクール」を受講される方へメッセージをお願いします。

 

谷 僕はいつも、まちづくりは「知恵と技術」だと言っています。まちづくりが上手くいっている地域には、「こうするとこう良くなる」という因果関係に関する智慧があるはず。それを僕らはまだ全然学べていないんです。上手くいく知恵をもっと集めて、誰もがそれを使える技術という公共財になれば、みんなが人の集団にもっと希望を持てるような気がします。講座では、公共財の考え方を学び、実際につくるというところまでやりたいと考えています。本の読者からは「もっと事例を知りたい」という声を多くもらいますが、本ではあえて詳しい事例を割愛しています。事例はみんなでつくっていくもの。一緒に事例をつくっていきましょう!

「まちづくりに疲れた人へ送る、まちづくり講座」

講師_谷亮治
日時_4月28日(火)20:00〜22:00
場所_Deまち(京都市上京区一真町67)
入場料_一般1,500yen、学生1,000yen
申込み_http://ptix.co/1ykuz7N

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西馬 晋也

西馬 晋也ライター

投稿者プロフィール

1986年生まれ。京都府出身。2009年、京都精華大学芸術学部卒業。
東京で紙加工専門のデザイナーとして勤務したのち、福井県に移住、その後京都府にUターン。株式会社応用芸術研究所に勤務し、京都府と福井県の複数地域にて、大学生・地域住民・行政と協働して行なう地域づくり事業や、地場産業の市場調査等に携わっている。各地に移動を伴うライフスタイルからの視点で、ものごとを編集していくことを目指します。
そのへんのタイ人よりはタイ古式マッサージが上手いです。

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